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サビタ(=ノリウツギ)


 季節外れの話題になってしまうが、超閑散期の職場で読んでいる本「現代日本紀行文学全集 山岳編」 のなかに小暮理太郎の「サビタのパイプ」という作品がある。

 サビタとは北海道などに自生する樹木の呼び名らしいので、昔山仕事をしていた同僚に尋ねてみた。「サビタっていう木、知ってる?」さすがに名前だけは知っていた。どれがザビタかといわれれば示すことはできないが名前は聞いたことがあり、この辺りでは訛って「サンビタ」と言うとのこと。
 それで家に帰ってから調べてみた。

 NPO法人 日本パークレンジャー協会のHPの「コラム」の中に次のようにある

 「サビタ」をご存知ですか。初めて聞くと言う方も多いと思いますが、 「サビタ」は「ノリウツギ」の別名です。東北や北海道で良く知られていますが、むかし東北地方から北海道の開拓に移住した人たちによって名づけられたと言われ、岩手、秋田や青森では方言で「サビタ」、「サプタ」、「サンビタ」、「サンブタ」と呼ばれるそうです。

ノリウツギは夏の盛りの8月に府民の森で見られます。花はアジサイに良く似ていて全体が白い花で、総(ふさ)状に咲き、装飾花(ガク片)数枚が下部につき、花は中央に小さくついて密生します。ノリウツギは和名で「糊空木」と書き、内樹皮に含まれる粘液が和紙を漉(す)く時のつなぎ剤として使われています。

「 サビタ」は俳句の季語で「花さびた」としてよく読まれます。語感から来るイメージは美しいが何となく淋しい感じを受けますね。そんな「サビタ」にまつわる物語を次に紹介します。

 あるアイヌの若者か美しい娘に恋をした。恋心を打ち明けられた娘は「このサビタの花が散る時がきたら…」と返事した。若者は燃える思いで待ち焦がれた。しかし、花は枯れ果てても落ちずいつまでも残ったままだった。そして恋は実らなかった。

 これはアジサイの花と同様、「サビタ」の装飾花は綺麗で目立つが実を結ばない、そして冬になってもドライフラワーになって枯れずに残る。それと知らずに待ち続けた若者。何とも悲しい酷な結末である。 

  もう一つの話は、北海道出身の作家「原田康子」のデビュー作「サビタの記憶」と言う短編小説。ストーリーは、病弱な女学生が母の勧めで温泉に保養しに来た。そこで同宿していた年上の男と知り合いになる。男はいつも部屋で本を読んでいたが、女学生はその男に淡い思いを抱くようになった。

 ある日、男は散歩の途中で白い花を見つけ彼女に手折って渡した。「なんて花?」、「サビタ…」と男は答えた。そして「サビタの花が散る時に…」と言った。それから暫くして突然官憲が温泉宿に踏み込んできた。男は思想家だった。二人に別れが訪れたことは言うまでも無い。多感な女学生の一夏の淡い記憶..と言う内容である。(た2013.Aug) (全文引用)



 小暮理太郎はサビタのパイプの原材料を求めて山中に入るものの、イメージしていた木には巡り合えなかった。後に、サビタがノリウツギの事だったと知って、それなら何もあんなところまで行かなくともという落ち。



 わたしが最初にこの木を知ったのは開花期のこと。盆を過ぎたころではなかったかと思う。この時期、辺りに目だった花がない中、林の縁でひっそりと咲いていた白い花が印象的だった。図鑑を見てすぐにノリウツギとわかった。数年はその一株以外に見たことがなかったので、どこにでもあるというわけではないのだろうと、毎年開花を楽しみにしていた。ところが、この1,2年で、この道道沿いでも割と普通に見られることがわかった。知り合いの山にも何本もはえているので、今年は貰って来ようと思っている。 


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by sox0513 | 2020-02-21 22:39 | 山野草 | Comments(0)

冥土の旅への一里塚


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